トップ画像:NASA / JPL-Caltech / University of Arizona / Public domain
【続報】初期クリティカル運用フェーズを終了(10月21日)
JAXAは10月21日、MMXの初期運用の重要なシーケンスが正常に実施され、探査機の健全性を確認したと発表しました。これにより、初期クリティカル運用フェーズを終了します。
この段階は、ロケットからの分離後、太陽電池パドルの展開や三軸姿勢の確立などを行い、探査機の健全性を確保するまでの期間です。今後は搭載機器の初期機能確認と、火星圏への往路巡行運用に向けた準備を進める予定です。
火星衛星探査機「MMX」が10月20日早朝、H3ロケット10号機で宇宙へ出発しました。JAXAは、種子島宇宙センターから日本時間4時41分03秒に打ち上げ、約1時間11分13秒後に探査機を正常に分離し、軌道へ投入したと発表しています。
MMXは、火星の衛星フォボスの砂や岩石を地球へ持ち帰る計画です。打ち上げ成功を出発点として、2027年の火星圏到達、2031年の帰還を目指します。打ち上げ後の初期運用の結果と、これから取り組む探査の内容を整理します。
MMXとは、火星の月から試料を持ち帰る計画
MMXは「Martian Moons eXploration」の略称です。主な探査先は火星そのものの地表ではなく、火星を回る衛星フォボスです。周辺から形や地形、物質の特徴などを詳しく調べ、表面に着陸して試料を採取し、地球に届けるサンプルリターンを計画しています。
採取の目標は10g以上です。JAXAは、フォボスだけでなく、もう一つの衛星ダイモスや火星も観測対象としています。地球に戻した試料の分析と宇宙からの観測を組み合わせ、火星圏がどのようにでき、変化してきたかを調べます。
なぜ火星本体ではなくフォボスなのですか
プロジェクトの公式FAQは、大きな理由として火星の重力を挙げています。火星に着陸した後、その重力に逆らって離脱し、試料を地球へ運ぶことには大きな技術的な難しさがあります。
日本は「はやぶさ」「はやぶさ2」の小惑星探査で、重力の小さい天体から試料を採取する技術を積み重ねてきました。MMXはその経験を生かしてフォボスからのサンプルリターンに挑みます。火星の衛星を調べることには、科学的な目的と、将来の探査に必要な技術を得る目的があります。
砂の成分から衛星の起源を調べます
フォボスがどのように生まれたかは、まだ解決していない問題です。公式のミッション説明では、火星への大きな天体の衝突による破片からできたとする「巨大衝突説」と、小惑星が火星の重力に捕らえられたとする「捕獲説」が紹介されています。
公式FAQによると、捕獲説なら試料の成分は小惑星に近く、衝突説なら火星本体の砂や岩石に近いと予想されます。これが試料を持ち帰って成分を調べる理由です。どちらの説が正しいかは今回の打ち上げで決まったわけではなく、今後の観測や分析によって確かめる課題です。
数字で整理する、成功したことと今後の目標
- 10月20日4時41分03秒:H3ロケット10号機がMMXを打ち上げました。正常分離と軌道投入はJAXAが確認済みです。
- 10月21日:探査機の健全性を確認し、初期クリティカル運用フェーズを終了しました。
- 2027年:約1年かけて火星圏へ到達する計画です。
- 10g以上:フォボスで採取し、地球へ届ける試料の目標量です。
- 2030年:観測と採取を経て、火星圏から離脱する計画です。
- 2031年:試料を収めたカプセルを地球へ帰還させ、オーストラリアで回収する予定です。
打ち上げ・分離・軌道投入を経て、初期クリティカル運用フェーズを終えた段階です。一方、火星圏への到達、フォボスへの着陸、試料採取、帰還は今後の計画です。「世界初の火星圏からのサンプルリターン」は、これから達成を目指す目標として区別して読む必要があります。
着陸と採取には複数の方法を用意
公式計画では、フォボスの近くで観測して着陸候補を絞り、ローバーを先に着陸させた後、探査機本体による2回の着陸を試みます。地形や物質の特徴を確かめる観測が、採取地点の選択につながります。
試料採取には2種類の装置を用意しています。C-サンプラーは表面を掘って採取し、P-サンプラーは窒素ガスを吹き付けて表面の試料を集めます。公式FAQは、硬い表面などで掘削による採取が難しい場合に備えた構成だと説明しています。
今後は搭載機器の初期機能確認と往路巡行に向けた準備を進め、その先に火星圏への到達と観測・着陸を計画しています。JAXAが発表した今回の結果を基準に、探査機の運用状況や計画の更新を確認していくことになります。
参照した情報源
- H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ結果 (JAXA / 2026-10-20)
- MMXプロジェクトサイト (JAXA)
- ミッション概要・ミッションフロー (JAXA)
- よくある質問 (JAXA)
- H3ロケット10号機の打上げ成功について (文部科学省 / 2026-10-20)
- 火星衛星探査機(MMX)の初期クリティカル運用フェーズ終了 (JAXA / 2026-10-21)
記事内の情報は2026年10月21日19時35分時点のものです。

